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千葉地方裁判所 昭和58年(わ)105号 判決

主文

被告人を懲役六月に処する。

押収してある大麻草一袋(昭和五八年押第七三号の一)、雑誌一冊(同押号の二)及びビデオテープ一巻(同押号の三)を没収する。

理由

(罪となるべき事実)

被告人は、

第一  法定の除外事由がないのに、昭和五八年一月二八日、大麻である大麻草約九・七六グラム(昭和五八年押第七三号の一)を自己着用のカーデガン右ポケツト内に隠匿携帯し、アメリカ合衆国統治領サイパン島サイパン国際空港からコンチネンタル航空五六三便に搭乗し、同日午後七時三二分ころ、千葉県成田市三里塚字御料牧場一番地の一所在の新東京国際空港に到着して本邦内に持ち込み、もつて大麻を輸入し、

第二  大麻及び男女の性交場面等を露骨に撮影したビデオテープ一巻、同様の写真を掲載した雑誌一冊を密輸入しようと企て、前同日コンチネンタル航空五六三便に搭乗して前記新東京国際空港に到着した際、同日午後八時一五分ころ、同空港内東京税関成田税関支署北棟旅具検査場において、携帯品検査を受けるにあたり、前記大麻草を自己着用のカーデガン右ポケツト内に、また前記ビデオテープ一巻(前同押号の三)をバツグ内に、前記雑誌一冊(同押号の二)を自己着用のズボンとシヤツの間背中部分にそれぞれ隠匿携帯していたにもかかわらず、同支署税関職員に対し、申告すべきものは何もない旨虚偽の申告をし、もつて税関長の許可を受けることなく、前記大麻草を輸入しようとするとともに、輸入禁制品である風俗を害すべき前記ビデオテープ・雑誌の図画を輸入しようとしたが、いずれも同支署職員に発見されたため、その目的を遂げなかつた。

(証拠の標目)(省略)

(法令の適用)

罰条

判示第一の所為 大麻取締法二四条二号、四条一号

判示第二の所為中

輸入禁制品輸入未遂の点 関税法一〇九条二項、一項、関税定率法二一条一項三号

無許可輸入未遂の点 関税法一一一条二項、一項

科刑上一罪

判示第二につき 刑法五四条一項前段、一〇条(重い関税法一〇九条違反の罪の刑による。)

刑種の選択

判示第二の罪につき 懲役刑のみを科する。

併合罪加重 刑法四五条前段、四七条本文、一〇条(重い判示第一の罪の刑に加重)

没収 いずれも関税法一一八条一項本文(大麻につき同条三項一号イにあたり、いずれも判示第二の犯罪に係る貨物として)

(量刑事情)

本件輸入にかかる大麻は、まだ生えているものを折りとつたもので、水分を含み、乾燥させれば相当の減量が見込まれるうえ、その形態に照らしても自己使用を目的とするものと認められ、またわいせつ図画(輸入禁制品)の輸入についても、その外観、形態数量等に照らし同様自己使用を目的とするものと認められ、従つて本件の事案は全体として比較的軽微なものということができる。

被告人は、昭和五六年三月、覚せい剤取締法違反幇助の罪により懲役一〇月に処せられその保護観察付執行猶予中でありながら、本件に及んでおり、遵法精神に欠けること甚だしい面はあるが、被告人も自己の行為の軽率さを深く悔み、更生を誓つているうえ、家庭の事情等をも考慮し、今回は早期に社会復帰をさせるのが相当であると判断し、主文の刑を科するにとどめることにする。

よつて、主文のとおり判決する。

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